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ほうき
ほうき

未知の酒を求めて

 のどかな村、サンデルト。 頬をなでる穏やかな風と、自然の香りが豊かなこの町は、 大陸の中で一番のお気に入りだ。 「由美」:新しいお酒がのみたーーい!  そんな平穏を壊すように路上で叫んでいる私の名前は由美。 職業はニート、趣味は飲酒、年齢は……もうすぐ30になるかな?  二十歳になってすぐ酒の魅力にとりつかれた私は、地元の酒場では飽きたらず、色々な種類のお酒を求めて世界中を旅してたんだ。  で、いろんなところを回った結果、このサンデルトっていう村にたどり着いたわけ。  いや~ここのお酒がまた美味しくてね~日本酒、ワイン、ビールと古今東西のお酒を知っていたつもりのあたしでも絶賛で………  って、そんなことはどうでもいいの! 今は飲んだことのないお酒がのみたい!  え?なんで新天地に行かないのかって?  正直なところ、もうこの大陸はあらかた巡り終わっちゃったんだよねえ~  まあそれ以上にお金がないっていうのもあるけどね。  働けって?やだよめんどくさい。そんな暇があるなら何かつまみに焼酎飲む。  それに、他の町の行くのが難しいってだけで、ここで骨を埋めるなら十分な財産は持ってるんだよ?  昼から働かずにぐうたらできる場所なんてなかなかないし、あたしにはサンデルトが合ってんだよね!  でも、流石に”飽きた”。  もう何年も住んでるから、酒場のメニューも三周目に入っちゃったし、刺激に飢えてしまっているわけ。  だから、何か新しいお酒をプリーズ! 「アドガイア」:………それで私のところに来たというわけですか。  というわけで、アドガイアさんのところにやってきたよ!  アドガイアさんはサンデルトの、入り口に突っ立ってる、頼りがいのある人なんだ。  旅人さんも行商人も、まずはこの人にお世話になるから、きっとこの村で一番情報通なはず! 「由美」:お願い!最近退屈で仕方ないの! 「アドガイア」:ニートが退屈と言うのも随分なご身分だと思いますがね…。 そういえば、酒場のマスターが、新しいお酒が入ったって言ってましたよ。 聞いてみたらどうです? 「由美」:何ィ?  おのれマスター、このあたしという一番の上客に対して新しいお酒を隠すなんてなんて恩知らずなの! 今すぐにでも酒場に行って尋問してやる! 「由美」:新酒を出せやコラアアァァ! 「マスター」:ひっ! ゆ、由美さん。お疲れ様です。今日もいつものでよろしいですか? 「由美」:ああうん。よろしく。 ………なんて言ってる場合じゃないわよ! アドガイアさんから新しいお酒を入手したって聞いたわよ!言質とったんだから! よこしなさい! 「マスター」:よりによってソロで酒池肉林なこの人に話したんですかあのバカァァ!? コホン……良いですか、由美さん。 お酒というのは飲み物です。 そして、飲み物というのは飲んだらなくなります。 つまり、お酒というのは有限なのです。 「由美」:何当たり前のことを言ってんの? 飲み物ってのは飲むためにあるのよ! それを飲まずしてどうするっていうわけ!? 「マスター」:有限だからこそ、余韻を持って味わうというのが重要なのです! 飲めれば何でもいいというのなら、あなたがいつも飲んでる麦酒を好きなだけ浴びせてあげますが!?  むぐぐ………確かに、一気に飲んでしまったらもったいないっていうのもわからなくはない。  でも、酒は思いっきり飲み干してこそでしょ! ちびちび飲む方が時間の無駄よ!  でも、価値観は人それぞれ。 ここは一歩引いて、相手に合わせてみるか。 「由美」:そうね、あなたの言うことも一理ある。 確かに、飲めればよいのだったら味にこだわる必要なんてない、というのも。 「マスター」:その通り。 由美さんの『飲み物は飲むためにある。』それもまた真理です。 しかし、飲む為だけならば、こんなにバリエーションがある必要なんてない。 お酒にバリエーションがあるのは、その『味の違いを感じ、楽しむ』為にあるのですから。  まあ正直なとこ、【新しいお酒】が飲めれば何でも良いんだけどね。 「由美」:よし、まずは一杯頂戴? 「マスター」:おっと、その前に。 由美さんにはもう一つ、生きる上での楽しみを知ってもらいましょう。 「由美」:へっ?      ・・・・・・ 「由美」:......。 ガサゴソ 「???」:......。 ガサゴソ  私は何故か今、地域清掃をさせられている。 マスターが言うには、そのお酒を飲む前の儀式としてこれをしなければならない、らしい。 『空きビンを集めれば集めるほど、サービスしちゃいますよ?』  なんて言われたけど、これって絶対詐欺だ! おのれマスター、この私という一番の(略  ちなみに隣で同じように地域清掃をしているのはご近所のユウヒちゃん。 何度かすれ違ってはいるけど、実は初交流だ。  いつもゴミ箱の中を漁ってるイメージしかなかったけど、意外と真面目なところもあるんだねー。  そんなユウヒちゃんに、親睦を深める目的もかねて、一つ質問をしてみる。 「由美」:ねえ、一つ気になることがあるんだけど。 「ユウヒ」:はい、なんでしょうか?  ユウヒちゃんは空きビンを袋に入れる手を止め、こっちに向いてくれた。 「由美」:この辺っていつも『こう』なの? 「ユウヒ」:えぇ、そうですね。基本的には今と同じような状態ではあります。 ふーん?  私にはこの景色は、明らかに異様だと思うんだけど……。 「由美」:じゃあ、追加でもう一つ質問なんだけど………。 なんで、この村は空きビンで溢れているの? 「ユウヒ」:………答えの分かりきっている質問ほど、虚しいものはないと思いますが。 「由美」:ウガアアアアア!  そう、今この村は空きビンで埋もれている!  見渡す限りの空きビン。ラベルに描かれている絵柄によると、あらゆるビンが酒類を内包していたことが分かる。  そんなにお酒を飲むサンデルト人は1人…… そう、私しかいない。 「由美」:マスターめ!体よく私に尻拭いをさせるなんて、策士すぎる………。 「ユウヒ」:いや、自分の尻くらい、自分で拭きましょうよ……。  結局、全ての空きビンを袋に詰め終えた頃には、夜もかなり深まっていた。  ただただ感じる疲労感と、大量の空きビンを共に酒場に戻ると………。 「マスター」:お疲れさまでした、由美さん。  なんとあのマスターが、優しい笑顔で出迎えてくれた!  見渡せばマスターだけじゃない。 最初に話を聞いたアドガイアさんに、いつも水辺でマリ○ァナ吸ってる人………  サンデルト中の人々が集まって、どんちゃん騒ぎをしてたんだ! 「由美」:ちょっとちょっと、何が起こってるのよ! 「マスター」:まあまあそう言わずにこちらへどうぞ。 約束通りの新酒と、それから港町の名産品の焼き魚です。 たくさん働いてくれましたからね。 今日は私の奢りです。  何何?今日のマスター、やけに優しいわね……。一緒にいたユウヒちゃんも、というかこの酒場全体が優しさに満ち溢れてる?  まあそんな疑問は置いといて。 やっっっっっっとお酒にありつけるわ!  朝からずっと待ったをかけられてた新酒…… 今、それを飲み干すときがきた! 「由美」:ゴクッゴクッゴクッゴクッ……… くぅぅ~!うまい! こんなおいしいお酒があるなんて! 「マスター」:ただのお酒ではありません。 そのお酒は、あなたが日中働いていたからこそ、そこまでおいしく感じられるのです。 「由美」:へ?…………アーウン、ソダネー  ………なんか胡散臭い話が始まったぞ。 「マスター」:今日あなたは、色を意識して味わう喜び、働くことの喜び、二つの喜びを得られたはずです。 それは、人生でかけがえのない………… …………………………(以下略  働くことの喜び、ね。 まあ、もしかしたら普通の人にはそう感じられるのかもしれないけど。  生憎私はニートなんでぇ! むしろニートであることに誇りを持って生活してるんでぇ!  働くことの喜びとか、わかんないんですよねぇ! ………ま、今日くらいはいいかな。 なんだかんだ言って、サンデルトも、サンデルトの人達も好きだし。  明日も仕事だと帰っていくみんなを見て、このままの生活が続くといいな、なんて思ったりはしてるんだよね。 「由美」:(それでも、働くことだけは絶対に嫌だけど。 )  さて、私もそろそろ眠くなってきたし、 また明日に備えて、家に帰ろうかな~。 未知の酒を求めて fin.

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