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感情世界ナノ
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均衡を保ちし者 前編「均衡を保ちし者」

神と悪魔が支配するこの世界の名は「ゼルディア」 悪魔は世界を真っ黒に染め上げようとしていた。 それをさせまいと37神もの神達は悪魔達と争い数百年もの月日が流れた。 争いの末、神も悪魔達もお互いに疲弊しきっていた。 37神もいた神側は今や12神、一方悪魔側は7体、絶滅寸前まで追い込まれていた。 その中で生き残った12神もの中の1神「均衡の神イリブリアム」はこれ以上の尊い犠牲を出さないため、世の平和のためにある生命を生み出した。 悪である悪魔の力を善である神よりも強めないために、この世界のバランスを崩さないために。 生み出された彼女の名は「リリイア」均衡の神の神使である。 彼女は地上に降り立ち、悪魔の力を強めないため努力を尽くした。 結果、彼女が誕生してから100年経った今も悪魔の力は神をうわまらず、世界は平和を保っていた。 そして今日も彼女は頑張り続ける。 この世界の均衡を保つため。 ーー前編均衡を保ちし者ーー ザァァァァァァァァァーー 雨が降っている。強い雨だ。 いつもは荒れ果てた荒野で雨など滅多に降らないのだが、今日は珍しい。 私は何をしていたかというと見回りをしていた。 こんな荒れ果てた地で草木一本も生えてないよう場所だが、たまに迷い人がいる。 どうしてこんなところにいるのかは謎だが、見つけ次第保護し、近くの街に送り届けている。 ……今日はいなさそうだな、他の場所を回るとしよう。 そう思った矢先に、どこからか微かな鳴き声のようなものが聞こえた。 私は聞こえた方角を頼りに急いで声の鳴く方へと駆けつけると、そこにはバラバラに壊された馬車と斬殺死体があった。 大人三人、御者1人、夫婦と思わしき人間が2人。 そして、岩陰に隠れておくるみにされている赤ん坊が1人。 ……何者かに襲われたのだろう。 盗賊か何かに。 岩陰に赤ん坊がいるのを見ると、大切なものは無事守れたようだな。 ……この赤ん坊は、私が責任を持って面倒を見ることにしよう。 均衡の神使である私の役目であるからな。 おぎゃあおぎゃあ!! よしよし、暴れるんじゃない。 抱っこしにくいだろう。 さあ、早く家に帰ろうか。 リリイアは指をパチンと鳴らすと、瞬時に家に帰宅した。 ーーー五年後 あれから7年経った。 私は育児というものをやったことがなかったので最初はかなり苦戦した。 しかしなんやかんやでもう7年、おくるみにされていた赤ん坊はすくすくと育ち大きくなり、今や人の言葉を話し私のお手伝いをしようとしてくれている。 「母さま母さま!私もきんこーをたもつのやりたい!」 幼な子はとてとてと走って私に抱きついてきた。 「ダメだ、お前にはまだ早い」 「えー?じゃあいつになったら私もお手伝いできる?」 幼な子は不満そうな顔を上げ私を見る。 「そうだな、お前がもっと大きくなって私の背くらいになったらかな」 私は手を幼な子の頭の上に合わせ、手をあげて私の頭の上まで合わせる。 「じゃあ早く大きくなる!母さまほら!ほら!」 幼な子はぴょんぴょん飛び跳ねて私の頭の上まで行こうとしているが、全然届いてない。 「それよりもそろそろ「学校」というものに行ってはみないか?」 私はしゃがみ込み、幼な子の目の位置に合わせる。 「がっこー?」 「そうだ、学校だ。お前と同い年の子供が沢山いる場所で、そこで先生といういろんなことを教えてくれる人からいろんなことを学ぶ場所だ」 「学校は楽しいと聞くぞ、お前のような子も沢山いる。行ってみたらどうだ?」 「うー……母さまは学校行ったことあるの?」 私が提案すると幼な子は……どういう表情だこれは……。 寂しそうな、悲しそうな顔だが新しいことへの興味が混ざり合っているような顔をしている。 「いや……ないな」 私は生まれた頃からこの姿だったから、幼な子のような時などなく、もちろん学校など行っていなかった。行かなくとも最初からある程度知識は持っていたしな。 私がそう言うと何を思ったのか幼な子は 「じゃあいかない!母さまといる!」 と言って私に勢いよく抱きついてきた。 「おっと……」 勢いよく抱きつかれたため、少しバランスを崩しそうになった。 この子が大きくなっていると実感させられるな。 それはそうと私が行ってないだけで何故幼な子が行かないなどと言うことになるのだ。 理由を聞くとしよう。 「幼な子よ、どうして私が行ってないだけでお前が行かないことになるのだ?」 「母さま学校行かなくてもいっぱい知ってるもん!学校なんか行かなくても母さまに教えてもらう!」 幼な子はイヤイヤとぎゅーっと強く抱きしめてくる。 「私は特別なんだ、最初から大体知っているだけで私だって必要であれば行くさ」 「特別ってなに母さま?なんでいっぱい知ってるの?」 「私はこう見えて人じゃない神様の使いなんだ、だから生まれた時から大人だしいろんなことを最初から知っていた、それだけさ」 「神様の使い?神様って本当にいるの??」 「ああいるさ、私は会ったことだってあるよ」 「うわあ!すごい母さますごい!」 肩をブンブン揺さぶられる、相変わらずテンションの高低差が激しい子だ。 「均衡を保つことも神様からの使命さ、私はずっとそのお役目を果たしているんだ」 「幼な子よ、均衡を保つと言うのはすごく難しいことなんだ、だからいろんな知識も必要だし時には強い肉体も必要だ。だから私の手伝いをしたいというのなら学校に行った方がいいと思うぞ?」 私がそう言うと幼な子は黙り込む。 しばらく考えた後、幼な子は真剣な顔で私に話しかけた。 「……私母さまのお手伝いしたいから学校いく!」 「よく言った、それでこそ幼な子だ」 私は幼な子の頭を撫でる。 幼な子は嬉しそうに笑っている。 「じゃあ私は学校の学園長に入学の話をつけてくる、きちんと留守番をしておくんだぞ」 「はーい!」 ガチャーーバタン 学校ー学園長室 「久しぶりだな、あなたがここに来るのは」 指を鳴らして転移し、学園長室に入ると、部屋の奥に窓の外を眺めている学園長の姿があった。 身長が高い銀髪のエルフ、学園長シーラだ。 「こんにちは、学園長。今日は幼な子の入学の件で話に来たんだ」 「学園長だなんてあなたに呼ばれたくない、私達は古い付き合いだろう?今は2人しかいないんだからシーラと呼んで欲しいな」 窓から視線を私に向ける学園長、もといシーラ。 この人とは出会って79年の付き合いになる。 客観的に見れば、親しい仲、だとは思う。 シーラは表向きの職は学園長だが、裏ではこの国のかなりお偉い人らしい。 この国の大体のことはシーラに頼めば叶えてくれるのでお願いしている。 「すまない、シーラ。で、入学の件なんだがーー 「もう済ませておいたぞ」 シーラは食い気味に私に言った。 「む、早いな。助かる、ありがとう」 「どういたしまして」 「じゃあ私は失礼する、今日も近郊を保たなければいけないのでな」 「ちょっと待たないかリリイア!」 シーラは声を上げて私を呼び止める。 少し驚いたぞ、普段はそんな声をあげる人じゃないからな。 「少しの間だけ、お茶しないか?たまには少しの休憩も必要だと思うのだが。あなたは育児や均衡の維持を毎日毎日している身、しっかりとした休息を取らねばいつか倒れてしまうぞ?」 「……じゃあ少しだけ、休ませてもらおう」 確かに彼女の言う通りだな、これから先私の想定外があったとして悪魔と対峙することがあったとしたら、万全の状態でなければならない。 30分くらいなら大丈夫だろう、「眼」の監視下もある。 彼女の言葉に甘えさせてもらうか。 私が思考している間に、シーラは丸いテーブルと椅子を私の目の前に用意した。 「座るぞ」 「どうぞ」 私はストンと椅子に座った。 私が座るとその間に紅茶を注ぎ終わったシーラも座った。 私はシーラから紅茶を受け取り、飲む。 シーラの作る紅茶はいつも美味しい。 私が一口飲み終わるとシーラが口を開いた。 「どう、味は?」 「美味しいぞ、更に腕を上げたな」 私がそう言うと嬉しいのか顔を赤くするシーラ。 「そ、そうか……それはよかった」 恥ずかしがりながらもそう言った後、シーラは一呼吸置いて再び話した。 「で、最近はどうなのだ?あの子供は」 「幼な子のことか、いい子に育っているぞ。少し親離れできてないようだけどな」 私は幼な子の顔を思い出す。 「人の子ならまだまだ親離れする年齢じゃないと思うぞ、私もエルフからすればまだまだ子供だしな」 「そうなのか?私はその辺よくわからない。まだ親離れしなくていいなら甘やかそう。ちなみに幾つくらいになったらするんだ?親離れというものは」 「うむぅ……私も人の子のことはあまり知らないからな……大体15歳あたりから精神的には自立するのではないか?」 シーラは頭を悩ませながらそう答えた。 「ふむ、わかったありがとう、参考にする」 私は紅茶を飲む。 「いいいい、そう言えば前々から少し気になっていたのだが……」 「ん?なんだ?」 「幼な子の名前って「幼な子」なのか?」 「名前?私は幼な子と呼んでいるな」 私は平然と答えた。 「えっ」 シーラは少し驚いた顔をしている、何か変なことを言っただろうか。 「……リリイアよ、少し確認するぞ?」 「え、ああ」 「私の名前はシーラ・アルカイア」 「ああ、知っている」 「あなたの名前はリリイア」 「ああ、それも知っている」 「幼な子と呼ぶ人の子の名前は、無いのか?」 「………確かに!」 私はハッとして声をつい上げてしまった。 「幼な子という呼び方が定着してすっかり名付けるのを忘れていた……」 「違和感とかなかったのだな……まあいい、休憩している間にあの人の子の名前を一緒に考えるとしようではないか」 「そうだな、一緒に考えてもらうと助かる」 休憩中はシーラと一緒に幼な子の名前を考えた。 ーーー夜 今日も均衡は保たれ、平和に終わった。 私は家に帰ってきた。 ガチャ 「ただいま」 「あ!!母さまおかえりなさい!」 とてとてと幼な子が抱きついてくる。 「うおっと、よしよし、いい子にしてたか?」 「うん!今日はお絵描きしてた!」 嬉しそうに私の顔を見て幼な子は話す。 「そうか、どれ、見せてみろ」 「これ!!」 幼な子がノートに書いた絵を見てみると、赤い髪の……多分私であろう人物が描かれていた。 「これは……私か?」 「うん!母さま!!本で書いてたの!一番大好きな人を描いて見せたら幸せになれるって!!」 「私母さまといっぱい幸せになりたいから描いたの!!」 幼な子は笑顔で話す。 「ありがとう幼な子。私からもお前にプレゼントがあるんだ」 「え!?なになに!」 幼な子はわくわくしている。 「今までお前には幼な子と呼んできたが、それは名前では無い」 「だから今日お前に名前をつけてやろうと思っていてな」 「私の名前っておさなごじゃなかったの?」 「すまない、名前じゃなかったんだ。だが今日学園長と考えてきたんだ、お前の名前はーー 「いらないや」 幼な子は食い入るように言った。 「がくえんちょう家族じゃ無いもん、私の家族は母さまだけだもん……」 幼な子は俯き、体をぷるぷると振るわせる。 「幼な子……」 「母さまがちゃんと考えてくれた名前じゃなきゃ嫌!!!!!」 幼な子は涙をぽろぽろと流し、二階の寝室へと走っていった。 「……幼な子」 私はどうすれば良かったのか、わからなかった。 「……今日は、そっとしておくか」 私は家から外に出た。 ガチャ 少し冷たい風が吹き付ける、まだ三月だ。 少し寒い、だが今の私にとっては心地いい風かもしれない。 私は今一度自分と言う生命を振り返ろうと考えた。 そうすることで何か新たな発見があるかも知れない、幼な子のことをわかってやれるかもしれないと考えたからだ。 私は、生まれた時から「我」がなかった。 好きなもの、嫌いなもの、誰にだって一つはあるようなものが私にはなかった。 私のこの悪魔と戦う力だってこの世界の中ではちょうど中間くらいの強さだ。 私と言う存在は得手不得手が存在しなく、全てが平均に定められている。 更に私は個人的感情がない。 幼な子を育てているのも偶然幼な子がそこにいたからだ。 善から作られた存在だから善なる行動をしただけだ。 迷い子を拾ったからには私はその子供を幸せにする義務がある。 だから今こうして考えているのも善意ある行動の延長線でしかないんだ。 シーラの時もそうだ、50年前に森で倒れていた彼女を救ったら友達になってほしいと言われてなっただけでしかない。 全てにおいて、私の意思や感情は一切介入していない。 ただ悪ではない生命だから受け入れた、均衡を保つためにやっているだけなんだ。 善と悪のバランスを保ち続けることが、私の使命。 「……そんな私が”母さま”か。幼な子の前だけでもちゃんと母親になっていかなければいけないな」 私は星空をぼーっと眺める。 名前、考えないとな。 その日の夜は日が明けるまで幼な子の名前を考えていた。 朝ーー 「おはよう母さま!」 「ああおはよう、ご飯はできているぞ」 とてとてと二階から降りてきて椅子に座る幼な子。 私はすでに座っており、食事も並べていた。 「幼な子、昨日はすまなかった。私はお前の気持ちをわかっていなかったよ」 私は申し訳なさそうに謝る。 「ううん!全然気にしてないよ!母さまが名前ちゃんと考えてね!!」 幼な子は明るく振る舞っている、本当に気にしてないのだろうか。 幼な子を見る限り朝ごはんはぱくぱく食べているから食欲もあり、体調に問題はなさそうだ。 子供のことはよくわからないな。 「ああ、名前は昨日ずっと考えてたんだが、まだイマイチきちんとした名前が思いついてないからもう少し待ってくれ」 「はーい!あ、今日ってがっこー行く日?」 「ああ、そうだ。後30分で向かうから準備しておいてくれ」 「わかったー!」 幼な子は目玉焼きパンを食べ終わり、洗面所で顔を洗い歯磨きを始める。 「制服とカバンは机の上に置いておくぞ」 「ふぁーい!」(はーい!」 ーー30分後 「準備終わり!」 「よし、いくか」 青い制服を着てカバンを背負う幼な子。 気合は十分だ。 「じゃあ、手を繋ぐんだ」 「うん!」 ガチャ 「「行ってきます」!」 ーーー ーー 中編「日常が変化していく時」

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