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感情世界ナノ
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【全てを知ったその先には】 第2話「フィーネを知りたい」

ーーー ーー ー あれから数分。 「ぐすっ……ぐすっ……」 フィーネは涙を拭き取りベルゼアーテにぎゅうとしがみついていた。 「よしよし、落ち着いたかい?まさか名前をつけただけでここまで号泣されるとは思っていなかったよ」 ベルゼアーテはフィーネの頭を撫でながら優しく言った。 「す、すみません……こんなところで泣いてしまって……」 フィーネはしゅんと俯きながら言った。 「気にしなくていいよ、キミも辛いことや苦しいことが沢山あったからあんなところにいたんだろう?私の胸でいいのならいつだって貸してあげるよ」 ぎゅっ ベルゼアーテは抱き抱えながらもフィーネを抱きしめた。 「……ありがとう」 ぎゅう フィーネも静かに、そして強く抱きしめ返した。 「……ベルゼアーテさんって……すごくあったかいですね……」 フィーネの顔は見えないが、安らぎ落ち着いたような声を出している。 「よく言われるよ、フィーネもだいぶ落ち着いてーー ん? フィーネの体が震えている。 落ち着きすぎてまた涙が出てしまったのかな? 私はフィーネの方へ振り向くとーーー 「べ、べべべるぜあーてさんっ……落ち着いたらわ、わたし何か怖くなってきちゃってっ……!」 「は、早くおりたいですっ……!」 フィーネはぷるぷると怖がり涙目になっていた。 私はクスッとつい笑ってしまった、顔がコロコロ変わって面白い子だよ全く。 「フッ……わかったよ。じゃあ一瞬で着くのとゆっくり降りていくのとどっちがいい?」 「一瞬って超速いってことですかっ……!?ゆ、ゆっくりでっ……!」 「多分キミはスピードを感じることさえできないと思うけど、フィーネがゆっくり行きたいというならそうしようか」 ベルゼアーテはフィーネを抱きしめる体制からひょいっとフィーネを一瞬だけ魔法で浮かせおんぶした。 「わわっ!?」 「しっかりつかまっていなよ?じゃ、いこうか!」 「へ?」 フィーネがポカンと口を開けた瞬間ーー ビュウゥゥゥゥゥゥゥウン!!! 恐ろしく速いスピードで空を駆け抜けていく。 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?はやいはやいはやいはやいはやぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!?!?!?」 フィーネの恐怖による悲鳴が空々に響き渡っていった。 ーーー30分後 ーークゼスタート王国ーー ーー噴水広場 ーー朝 8:00 ーー人通り 少ない 「ついたよ」 ベルゼアーテはフィーネを降ろす。 「ア、アハハハハハハ………」 助手の方を見ると、恐怖に呑まれすぎてフィーネはプルプルと震えながら笑っていた。 もう少しゆっくりにするべきだったかな……。 「……ちょっと休もうか」 私はプルプルと震える助手の手を取り、広場にあるベンチに腰をかける。 そろそろ助手の目を覚まさせないとね。 「大丈夫かーい?助手ー?」 ベルゼアーテはフィーネの眼前で手をふりふりと振った。 「ハハハハハハーーーはっ!?」 フィーネはハッと我に帰る。 「あ、あれ?ここはどこですか……?」 フィーネは当たりをキョロキョロと見渡し、不思議そうな顔をした。 「ここはクゼスタート王国、キミはさっきまで恐怖に呑まれてちょっとおかしくなっていたんだよ」 「あ……」 フィーネはあの地獄の30分間がフラッシュバックする。 「ううぅ……ホントに怖かったですっ……」 フィーネは頭を押さえてプルプルと震える。 「あのスピードはキミにとってはまだ早すぎたようだね、次からはもう少しゆっくりと飛ぶとしよう」 「は、はいっ…お願いします……」 それから会話はなく、助手と私に沈黙が訪れた。 もう少し休ませてあげようかと思い、私は噴水の周りで遊んでいる子供たちをボーッと眺めているとフィーネが「あの……」と話しかけてきた。 「ん?なんだい?」 ぐ〜……。 「す、すみません……お腹すいちゃって……」 フィーネは少し照れながら言った。 「じゃあ何か屋台で焼き鳥でも買おうか、一緒に食べながら家に帰るとしよう」 私はそう言って助手に手を差し出す。 助手はおどおどしながらも「は、はいっ……!」と答えて手を繋いだ。 純粋でいい子だなと思う、この子はいい助手になってくれそうだ。 タッ……タッ……タッ……。 私たちは広場からすぐ近くにある焼き鳥の屋台へと向かい、たどり着いた。 「助手、どれが食べたい?」 「え、えーと……うーん……」 フィーネはどれも食べたそうに見ている。 「悩むかい?」 「は、はいっ……」 「じゃあこうするとしよう、店主焼き鳥各種2本ずつください」 「えっ!?」 助手は物凄く驚いている。 面白い顔だ。 「あいよ、1200ゼンね」 「え、あ、い、いいんですか!?わたしなんかのためにそんなに買っちゃってっ……!?」 フィーネはあわわと慌てふためきながら私の服を掴んで揺さぶっている。 「いいんだよ、気にしなくていい」 ベルゼアーテはお金を店主に渡しながらフィーネに言った。 「で、でもっ……わたしなんかのために……そんなに良くしてもらわなくても大丈夫ですから……。良くしてもらわなくてもわたしちゃんとベルゼアーテさんの助手しますからっ……」 フィーネはもじもじと俯きながら言った。 「……ここじゃアレだし一旦外に出ようか」 ベルゼアーテはフィーネの手を引っ張り屋台から出てさっき座っていた広場のベンチに座らせる。 ベルゼアーテもフィーネの横に座り、焼き鳥の入った袋を開けフィーネに見せる。 「はい、どれがいい?」 「……えっ……?あ、えーっと……ももの焼き鳥ください……」 フィーネは一瞬ポカンとしたもののももの焼き鳥を指差す。 「はい、どうぞ」 「あ、ありがとうございます……」 フィーネはベルゼアーテから焼き鳥を受け取り、パクっと食べる。 ベルゼアーテもフィーネと同じ桃の焼き鳥を食べる。 2人が焼き鳥を食べている間沈黙が訪れていたが、2人が食べ終わった後一息ついてベルゼアーテが口を開いた。 「さっきの話の続きをしようか」 「……」 「助手、キミは自分に随分と自信がないようだね、更には人を恐れているようだ」 「キミがそんなふうになってしまったのは過去に何か辛いことがあったからだろう? だから、キミが良ければ私にその辛さを、苦しさを分けて欲しい」 フィーネは少し口を紡ぎ、やがて決心したのか重い口を開いた。 「……っ……わ、わたし……数ヶ月前までは……テルトラ国のミスト街のある一軒家でお父さんと住んでいました……」 「家族は……お母さんはいなかったのかい?」 「……お母さんはわたしが生まれた後にすぐ死んじゃって……お父さんがわたしの面倒を見てくれていました……」 「お、お父さんはすごくこわくてっ……わたしをオマエって呼んでて……わたしが物心ついた頃にはご飯を作ったり掃除をしたり全部やらされていました……」 「ご飯も掃除も何もかも……何も教えてもらえずにやらされて……ちょっとでも失敗したらすごく怒って殴られたり蹴られたりしてました……」 『オマエはなんでこんな簡単なこともできねえんだ!!」 『このクソガキッ!!」 バキッ! ドガッ! 『ご、ごめんごめんなさいっ……!!だ、だから痛いのはやめてくださいっ……」 「……」 ベルゼアーテは黙っている。 なるほど、助手は名前をつけてもらえずオマエ呼ばわりされていたのか……だから私が名前をつけた時あんなに泣いていたんだね。 しかし完全に過去に入り切ってしまっているね、助手は。 助手の口々から「お父さん」であろうセリフが次々と出てきて、当時の助手のセリフさえも完全に再現しているようだ。 虚な目をしている助手自身はそれに気づいてないようだけど。 「お父さんはいつもどこかに出かけていて……いつも帰ってきたら機嫌が悪くて……私は何も悪いことしていないのにいっぱい暴力してくるんです……」 『オマエは黙って俺の言うことを聞いてりゃいいんだよ!!」 『何のためにオマエを育ててやったと思ってる!?俺が楽するためだ!!」 『良く覚えとけ!!」 ドガッ!! 『オマエの存在価値なんてな!!」 バキッ!! 『ハナっからねえんだよ!!」 ボコッ!! 『俺にとってオマエはただの都合のいい道具としか思ってねぇ!!わかったかっ!!」 「わたしはその時、自分がどれほどの存在かを思い知らされました……」 「わたしは……いい子にしていれば……いつか他の子達のように誕生日を祝われたり……お父さんやお母さんと仲良しできたり……幸せな日が来ると思っていました……」 虚なフィーネの目から涙がこぼれ落ちる。 「でも、それはわたしだけの幻想で……お父さんは最初からわたしを都合のいい道具としか見てなかったっ……」 「お父さんの言葉を聞いてから……こころもからだもなんにも動かなくなっちゃって……失敗してばかりでお父さんに捨てられちゃったんです……あのスラム街に……」 「わたしは……価値のない人間なんです……。でも……幸せになりたかった……私も人並みに……愛されたかったっ……」 「だから……ベルゼアーテさんのお誘いに乗ったんですっ……」 なるほど……この子が何故あの眼をしていたのかわかったよ。 フィーネは“幸せ”になりたかったんだ。 ただただひたすらに普通の“幸せ”を得たかったんだ。 その”幸せになりたい”という強い執念があの眼を作り出したんだ。 そして幸せになりたいと言う気持ちから縋る思いで私の助手になったということだろう。 「ベルゼアーテさんはこんなわたしに優しくしてくれて……いい人だって言うのはわかっているんですけど……あの時のことを思い出してしまって……怖がったりしてしまって……」 「ふむふむ、なるほど。キミのことは良くわかったよ」 泣いているフィーネの涙を手で拭い、顔を上げさせる。 「フィーネ、良く聞いてね」 「……はい……」 「まずキミは誰だい?」 「え……えっと……フィーネ・ヴェスタロッサ……です……」 「そう、キミの名前はフィーネ・ヴェスタロッサ。私の家族であり世界でたった1人の私の助手だよ」 「っ……!」 フィーネはハッとした顔になる。 「今ここで断言させてもらおう、私がキミを捨てるなんてことはない」 「キミが不安に思うことなんて何一つない、キミは他の子供達のように甘えてわがまま言ったっていいんだよ」 ベルゼアーテはフィーネに微笑んだ。 「私はね、フィーネらしいフィーネを知りたいなって思っているからね」 そう言ってベルゼアーテはフィーネを撫でる。 フィーネはぷるぷると震えベルゼアーテに抱きつく。 「おっと」 「わたし……子供でいていいの……?」 「いいよ」 「いっぱい甘えてわがまま言っていいの……?」 「うん、大丈夫」 「わたしらしく生きていいのっ……?」 「キミらしく生きてくれた方が私は嬉しいよ」 「っ……ぐすっ……ひぐっ……うぅっ……」 フィーネはベルゼアーテの胸に顔を埋め、静かに泣き出す。 「よしよし……」 ベルゼアーテは静かに泣くフィーネを撫で続けた。 ーー数十分後 「すぅ……すぅ……」 「おやおや、泣き疲れて寝てしまったようだね。無理もないよ、まだ朝なのにこの子にとっては色々ありすぎただろうからね」 ベルゼアーテはフィーネをおんぶする。 「一旦家に帰ろうか」 「この小さな助手と一緒に」 ーーー ーー ー 次回「助手フィーネ誕生」 次回更新日は1月14日。

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