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アナザーズxファンタジア【三章過去編】 第1話「始まり」

ーーある古びた屋敷 「……グゥ…」 名も無き「地形」の獣は苦しんでいる。 自分の中にいる「悪」を必死に抑えるよう根を張り巡らして、堪えるように踏ん張っている。 「ァ…ァァァァ…!」 獣から禍々しい瘴気が溢れ出し、屋敷全体が闇に包まれー 「ーァ ドゴォォォン! 屋敷は爆発した。 ーーー ーー ー 『オレはーーーーート』 ニクイ… 『邪神ーーーを倒すぞ!』 ニクイ…! 『……ーーーーーぜ…。』 ニクイッ! 「ハッ…!」 ある獣は目がさめる。 「ココハ…」 屋敷は崩れ、空は色鮮やかな赤を描き、木々は緩やかな風にガサガサと自然の音色を奏でている。 ピチャ 獣は足を動かすと水たまりが音をたてる。 獣はふと、水たまりを見た。 水たまりに映し出されたのは以前の美しい姿ではなく、酷く禍々しい醜い姿。 獣は自分自身に何が起こったのかわからなかった。 わかっているのはこの渦巻くように溢れる悪感情と自分だけ。 「…ワタシハ…コノカンジョウヲ…「自分」ヲオサエナケレバナラナイ…コノセカイノタメ…」 獣は自我が目覚め、再び決意する。 すると何処からか悲鳴が聞こえた。 「きゃぁぁぁぁぁぁ!」 「…!ニンゲンのコエ…!」 獣は助けようと慣れてない体で走り出す。 気配を探って森の中へ入り、アルリーウルフに襲われている人間の子どもを見つける。 「いや…こないで…こないで…」 「ヴェェェェェ!!」 少女はずさずさと後退りし、やがて背が木につく。 アルリーウルフが少女に襲いかかった瞬間ー ドシュ! 「ヴギュッ!?」 アンリーウルフは地中から出てきた根で串刺しになった。 「ぇ…?」 「ガ…ァ…」 串刺しになったアンリーウルフは生命力を吸われ干からびていく。 アンリーウルフを根が投げ捨てるとある化け物が姿を現した。 「ダイジョウブカ…グッ…!?」 獣は少女に声をかけると悪感情が溢れ出し、コロセコロセと訴えてくる。 「ぁ…ぁぁ…」 少女は獣の言語を理解できず、ただ恐ろしい姿とアンリーウルフをいとも容易く殺した強さに体が恐怖し、言葉が出ない。 少女からすれば獣の言葉は届かず、ただ目をギラつかせて逃げるなと訴えているようにしか見えないのだ。 「ハ…ハヤク…イケー ザシュ 獣の背中に矢が刺さった。 「ァ…?」 獣が後ろを振り返ると冒険者達が三人武器を構え、警戒していた。 「ユイラ!はやくこっちへ!」 「は、はいっ!」 「ここは俺たちに任せて街へ逃げな!」 冒険者達は少女を街へ逃がし、再び獣に武器を向ける。 「…ナ、ナゼ…ナゼ…!スガタガミニクイダケデ「アク」トキメツケケンムケル…!」 獣は言葉を発すが冒険者達には届かない。 「くっ…!もしや屋敷の爆発はコイツがやったのか…!駆けつけてきて正解だったぜ…!」 「なんて圧力だ…!だがな!俺たちは負けるわけにはいかねぇ!」 「…」 「ナゼワタシハコンナモノヲマモッテイタ…ナゼ…ナゼワタシハ…!」 獣は感情が高ぶり、力を込め地が揺れ動く。 ゴゴゴゴゴ…! 「コンナセイメイヲマモッテイタァァァァァァァァ!!!!!」 獣は怒り狂い更に姿が歪なものに変わっていく。 「今がチャンスだ!だぁっ!」 剣士が走り獣に飛びかかり剣で獣に攻撃しようとする。 しかし獣に刃は届かず、剣士の視界がぐるっと回る。 「がっ…!?」 剣士は獣の鋭利な木の刃により体が半分に割かれていた。 「オロカナニンゲンドモメ…!」 真っ二つに割かれた剣士を見て武道家は一瞬呆然とする。 「アルドッ!?……!クソがァッ!」 すぐ気を取り直し、悲しみを怒りに変え獣に飛びかかる。 「あァァァァァッ!!!」 武道家は殴りかかろうとするが獣が木の刃を振り回す。 がー 「フェイクだッ!」 武道家は避け 「アルドの仇ッ!!」 渾身の一撃をバケモノにくらわす。 「へへっ…どうだ…!これでアルドのー 「ソレデ”オワリ”カ?」 「!?」 上を見上げると表情を一切変えず武道家を見下ろす獣がいた。 「オマエタチニンゲンノイカリナド…ワタシノイカリ二クラベレバ…!」 ドシュ 「がっ…!」 武道家は化け物の圧力に固まってしまい、根の攻撃を腹部に受けてしまう。 「か…!ごっ…」 あっという間にあれほど鍛え抜かれた肉体は干からび、化け物の養分になっていく。 「…」 グシャ 武道家は倒れ、獣に潰され粉砕する。 「サイゴノニンゲン…」 化け物は攻撃してきた冒険者を探すがいない。 逃げた痕跡もなく、まるで風のように消え去ったようだ。 雨がポツリポツリと降ってきた。 雨に当たった獣は体も心も冷まし、冷静になる。 「……ニンゲン…ホロボ……ダメ…デモ…」 自分のあの怒りは紛れも無い本物、しかし人間を滅ぼしてしまっていいのか。 しかし主人が言っていたような人間はいなかった。 偽善者ばかりの世界…主人の言う人間は人間によって滅んだ。 私がこの悪を克服しー 世界をー ザシュ 人間でいう腹部辺りに小さな小さなナイフが刺さっていた。 獣は我にかえり、刺した人間を見るとー 「ふぅ…!ふぅ…!」 助けた少女だった。 「ハ…?」 獣はわからなかった、理解できなかった。 少女の行動を。 「シねッ…!シねッ…!シねッ…!シねぇぇぇぇぇ!!!!!」 ナイフを何回も獣に突き刺す。 「バカミタイダ…」 「サッキマデニンゲンノタメ二カンガエテイタワタシガ…!」 「モウイイ…ワタシハワタシダッ!アイツモニンゲンモナニモカモッ…ドウデモイイ!!!!!」 獣は咆哮を上げ、少女を掴み上げる。 「!?かひゅ…!」 少女は浮いた足をバタつかせ必死に抵抗する。 「……」 「あ…!っぁ…!」 「コレガワタシノススムベキミチノイッポダ…!」 ゴキッ 「かきゅ!?」 少女の首を折り、獣は瞳の輝きを失った少女を投げ捨てる。 静かになった。 雨がザーザーと暴れ撃つように奏でている。 「…ナゼコロシテイイニンゲンヲコロシテカナシクナル…ワタシハニンゲンヲコロシタ、カンジナクテ…イイカンジョウナノニ…」 「ワタシハナンナノダ…!サッキカラジブンガワカラナイ…!!ナゼジガガメザメタ…!ナゼワタシハウマレタ…!ダレガワタシヲツクッタノダ!?」 「ワタシハナンノタメニソンザイシテイルノ!?」 獣は息を荒げてしまう。 落ち着く為深呼吸を何度かする。 「……」 獣は落ち着き、ノシノシと雨に打たれながら崩壊した屋敷へと帰っていく。 心なしかその顔は悲しんでいたようにも笑っていたようにも見えた。 ーー崩壊した屋敷 獣は屋敷へと戻った。 雨も止み、雲なき空に月が光を照らし、リーンリーンと虫たちが心地のいい声を発している。 獣は何も考えたくなく、とりあえず屋敷を立て直そうと邪魔な家具から除けようとしていた。 「……」 ガラッ タンスを除けると、ある一枚の写真がひらりと舞い落ちる。 「!」 その写真を覗き込むと、お爺さんと小さな少女が写っていた。 父親と娘だろうか、それとも執事とお嬢様だろうか、それは獣ですらわからない。 だが獣はその写真を見て、こう思った。 私が人間を殺して罪悪感を得るなら姿を変えればいい。 姿を変えれば、私が殺したわけではないのだから。 殺すのは悪の心を持った人間のみ。 それなら私はこんな感情を抱かなくていい! 獣はそう思い、目を閉じ無意識に自身の体を作り変える。 メキメキメキ…。 獣が目を開ける、先程とは景色が違うように見えた。 水たまりに自分の姿を映し出すとそこにはー 可愛らしい少女の姿が写っていた。 「これが…私…」 「目が少しおかしいけど…可愛らしい姿」 自分に見惚れていると熱気を感じ、顔を上げると遠くから複数の灯火が見える。 全裸の獣は殺した少女の服を思い出し、さっと作り上げて着る。 やがて火が近づいてくるとそこにはー 大勢の冒険者達がいた。 冒険者側もこちらのことに気づいたようでリーダー格と思わしき人物から声をかけられる。 「おい嬢ちゃん!そこで何をしているんだ。」 「…」 獣は黙る。 「なんだこの子は?」 別の冒険者がゆっくりと来て、リーダー格の男と並ぶ。 「わからん、化け物が突然出現してたってのによく生き残ってたもんだ」 「化け物はあのアルド達を殺すほどだろ?俺たちでもちょーっとキツイんじゃないか?」 「ハハハッ、なんとかなるだろ。こっちは三十人の手慣れが集まってんだ。数がちげえよ数が」 男達がそう話しているのを獣はジッと観察している。 「……」 獣は男達から一旦目線を外し、奥の集団を観察する。 見てみると人に似た…エルフ…または獣人…のどちらかの種族に首輪を付け奴隷にし、暴行を加えている人間達がいた。 「……ッ!!」 それを見た瞬間、獣の中でプツンと何かが切れる音がした。 「…バカみたい…」 「ん?何かいったか?嬢ちゃー リーダー格の男が少女に振り向くと スパッ! ブシュゥゥゥゥ! リーダー格の男の首から上がなくなった。 獣の刃のように変形した右手によって。 「黙れ、悪である貴方達が口を開くことは私が許さない…!」 獣はギラリと睨みつける。 「ば、化け物…!くっ…!」 もう1人は剣を抜き、構えた瞬間ー ボトッ 「あー 両腕両足を獣に落とされー 「害虫が…」 巨大な禍々しい木の鈍器が獣の背後から現れ、潰す。 グシャ ズキっ 獣は心がギュウッと苦しくなる。 「くっ…罪悪感など感じる必要ない…私は正しいことをした…!私は正しいことを…!」 獣が顔を上げると、まだ冒険者達はあの2人が殺されたことに気づいておらず各自様々なことをしている。 その中でも奴隷を虐めていた光景が獣の罪悪感を消し、獣を走らせる。 「ッ…!」 ダッ! 何故人間は他者を傷つけるようなことをする…! 何故人間は思いやれない人間ばかり…! 何故人間は自分のことだけしか見れない…! 「人間なんて…」 「バッカみたいッ!!」 獣は人間達の集団に飛びかかり、宙を舞う。 冒険者達は驚き、一瞬硬直してしまう。 その一瞬の隙が命を失うことになる。 獣はギラリと目を光らせながら地面をばんっと叩くがー 何も起こらなかった。 辺りは一瞬静粛に包まれ 「ープ、なんだよ新しいなんかの芸か!だっはっはっは!」 1人の人間が笑い出すと周りにいた人間も笑い出し、馬鹿にする。 獣はゆらりと立ち上がり、こう言い放つ。 「ーええ、貴方達が串刺しになる楽しい芸がね」 「え?ー ズシャァ! 冒険者達の真下から鋭利な根が飛び出し、冒険者達全員を貫いた。 多くの血が空を描き、獣にかかる。 「…ッ…!…ふぅ…」 獣は少し胸が苦しくなるがなんとか抑え、虐められていた少女を見る。 「ッ……」 少女はプルプルと震え涙目になっている。 「…貴女はもう恐れる必要はない、助かったの。あの人間は私が殺した」 獣は頰についた血を拭き取り、少女に近づきながら答える。 「…私は殺さ…ないの…?」 「…私が殺す理由がない、悪い人間は全員殺す、いい人間は殺さない。ただそれだけ」 「私は…いい人間なの…?」 「…虐められる人間は弱者の心を知っている…だけど強者の心はわからない。」 「貴女は弱者の心を持っているから、すくなくとも思いやることができる人間…だと私は思う」 「…私が…思いやる…」 少女は俯き、自分の震える手を見ている。 「…その首輪も外してあげる、力封じられてるっぽいし」 獣が首輪に手を当て魔法で外そうとするとー バチっ! 「ッ…!?」 力が弾かれ、獣は自分の放った魔法をギリギリで避ける。 「…私の首輪は鍵がないと開けられないの」 「…鍵…?」 「うん、世界に一つしかない鍵…」 「…どこで手に入る」 「…魔王が持ってる」 少女の発言に獣は疑問を抱いた。 「魔王…存在しているの?」 「…最近現れたの、この世界を征服するんだって」 「…私の知らない間に魔王という存在が…」 獣は少し考え、決意する。 「…わかった」 「…え」 俯いていた少女は顔を上げる。 黄色く輝く瞳をした少女は月夜に照らされながらこう言った。 「私が魔王を倒してあげる。」 ーーー ーー ー 次回「終わりの始まり」

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